東京人、台北生活で思うこと

台北の好きなところの一つに、狭い街だということがある。

思えば東京では、何かにつけて目的地が遠かったような気がする。中学・高校も片道1時間かけて通学していたし、やれ食事会だ飲み会だとなれば新宿・渋谷などに移動するわけだが、それにもまたかなりの時間を使っていた。帰りは人でごった返す駅を歩き、満員電車で帰るのが常だった。

ぼくは東京生まれの東京育ちで、他の場所に住んだこともなかった。だから都市に住むということは、そういうことが当たり前だと思っていた。そんな東京の広さや人の多さを知ったのは、東京を離れてからのことだった。

移動にかかる労力という点では台北生活はストレスフリーだと言える。目的地への移動時間は確実に短いし、ラッシュアワーはあるものの、東京のそれと比べればかわいいものだ。それすら面倒だとなれば、タクシーに乗ってしまっても大した金額にはならない。移動は生活する以上必ず起こりうるので、この点が楽だと生活の満足度も高くなるような気がする。

台北が小さいと感じるのは、一つはその立地的な特徴にあるだろう。台北は盆地なので、市街とそうでない場所の境界線がはっきりしている。今もっとも開発の進んでいる信義區にしたって、すぐ裏は山に囲まれている。六本木のようなモダンなエリアから伸びるその山道に一歩入れば、そこで台北は唐突に終わる。

ぼくが住んでいるエリアも、スクーターで10分も移動すれば川沿いに出ることができ、そこには全く別の光景が広がっている。この街では、日常と非日常の距離がとても近い。

これから台北に住んでみようと思っている人がいれば、是非スクーターを生活に導入することを検討してみてほしい。一旦スクーターを手に入れれば、台北全域が生活圏になる。東京での生活ほどスマートではないかもしれないが、あれやこれやを求めて台北中をビュンビュンと飛び回るのは、中々楽しいものだ。